出産すると体にどんな変化が起きるの?
出産は女性の体にとても大きな変化をもたらします。
その中でも特にダメージを受けやすいのが「骨盤底筋(こつばんていきん)」という筋肉です。
骨盤底筋はおしっこやうんちをガマンしたり、内臓が下がらないように支えている大切な筋肉です。
でも、日本の出産のやり方や、最近の女性の体の変化によって、この筋肉が弱りやすくなっているのです。
骨盤底筋ってどんな筋肉?
人間の骨盤底筋は「馬と同じくらいの厚さ」で、とても強くできています。
なぜなら昔の人間は地面で生活していて、おしっこを垂れ流してしまうと動物に追いかけられて、仲間が危険になるからです。
猿は木の上で暮らしていたので、排泄しても追跡されにくく、骨盤底筋はそれほど発達していません。
でも人間は「地面に降りた猿」なので、強い骨盤底筋が必要になったのです。
例えば、狩りや木の実を採集して洞穴に帰るときに、おしっこを漏らしたまま歩いていたら、敵に見つかってしまい命を落とす可能性もありました。
だから骨盤底筋は、人間の進化の歴史の中で特に発達した筋肉なのです。
日本に多い「会陰切開(えいんせっかい)」の問題
アメリカでは尿もれの原因は「肥満」が多いのですが、日本は少し違います。
日本では出産のときに「会陰切開」という処置をすることが多く、これが骨盤底筋を傷つけ、尿もれのリスクを高めているのです。
実は世界で会陰切開をよくやっているのは、日本とアフリカの一部の国だけ。
韓国でももうやめています。
骨盤と股関節のつながり
骨盤底筋は「内閉鎖筋(ないへいさきん)」という筋肉とつながっていて、股関節を安定させています。
日本では右利きのお医者さんが多いため、手術のときに左側の筋肉が弱くなりやすいといわれています。
その結果、日本には「変形性股関節症」という股関節の病気が多いのです。
骨盤の形の変化と出産の難しさ
最近の女性は、骨盤の形が「横に広い」から「縦に長い」形に変わってきています。
縦長の骨盤の生き物はチンパンジーです。
チンパンジーは四足歩行なので、骨盤にかかる縦方向の負荷が弱いので縦長の骨盤になります。
人の場合は、座り姿勢や運動不足が原因で骨盤の形に変化が出ていると思われます。
縦長の骨盤だと赤ちゃんが通る道(産道)が狭くなり、自然に産むのが大変になります。
そのため会陰切開や帝王切開が増えているのです。
帝王切開のあとに起きやすいこと
今後、骨盤はさらに縦長方向に変化していくことが予想されます。
そうなると、会陰切開でも出産が難しくなり、ますます帝王切開での出産が増えていくでしょう。
帝王切開は母子の安全を守るための大切な方法ですが、デメリットもあります。
お腹にメスを入れるので、腹筋の力を使いにくくなり、お腹に力が入りづらくなるのです。
その結果、腰痛や体幹の弱さにつながることがあります。
出産後の体を守るのは「運動」
人間は昔から「よく動ける体」があることで、脳や体を成長させてきました。
出産後の女性が元気な体を取り戻すには、骨盤底筋や体幹をトレーニングで鍛え直すことがとても大切です。
トレーニングをすることで、尿もれや腰痛の予防になるだけでなく、姿勢の改善や疲れにくい体づくりにもつながります。
日常生活で「くしゃみや笑ったときに漏れてしまう」「立ち上がると腰が痛い」といった悩みを持つ女性は少なくありません。
だからこそ、出産後の体に合わせた運動を取り入れることは、自分の健康を守る第一歩になるのです。
まとめ
出産に私自身も立ち会ったことがありますが、とてもすばらしい経験でした。
ですが、母体には大きな負担もかかります。
会陰切開や帝王切開は命を守る方法ですが、そのあとに運動をしないと尿もれや腰痛のリスクが増えます。
だからこそ、出産後、いや妊娠する前から「骨盤底筋」と「体幹」を鍛える習慣づくりが必要なのです。
具体的なトレーニング方法については、実際のセッションでくわしくお伝えしています。